<磁石プロの視点>
半導体製造装置メーカーのアルバックは、ネオジム磁石を代表とするレアアース(希土類)磁石の製造装置の国内生産を再開します。中国での全量生産体制を見直し、まず、2026年9月より神奈川県での連続式溶解炉生産を始めます。できる限り中国製の装置を使いたくない顧客の要望に対応し、中国に依存しないサプライチェーン構築につなげるとしています。
レアアースのネオジムが主成分の高性能磁石は、電気自動車(BEV)やハイブリッド自動車(HEV)のモーター、データセンターのHDD、産業用ロボット、精密工作機器、風力発電機、パソコン、スマホなどに幅広く使われています。ただ、ネオジム磁石の生産地は中国が8割超と偏っており、経済安全保障の観点から中国依存からの脱却を求める声が世界的に高まっていました。
アルバックはネオジム磁石の重要製造工程であるストリップキャスト法連続式真空溶解炉、連続式真空焼結炉、連続式時効炉(熱処理炉)を手掛け、同分野で世界シェアの約70%を占めます。2010年代には装置の納入先である中国に生産を移管し、22年までに全量を中国で生産するようになっていました。
これら連続式真空溶解炉、連続式真空焼結炉、連続式時効炉は、高性能ネオジム磁石を大量生産するためには欠かせない装置であり、ほぼ30年前からアルバック(旧日本真空)および大同特殊鋼が世界に先駆けて開発・生産してきました。特に、アルバックはその後、これらの装置で世界シェア70%まで引き上げています。
しかし、中国は輸出規制などでレアアース関連の資源や技術の囲い込みのための各種規制を強めています。この状況はアルバックの中国工場からの装置輸出にも影響が及ぶ恐れがあるため、国内生産への復帰を決定しました。
今夏に神奈川県茅ケ崎市の本社工場で、年間最大12台の溶解炉の生産体制を完成させます。これらの生産能力は、ネオジム磁石を中心にレアアース磁石の生産能力に換算すると約2.4万トン分に相当することになります。
アルバックは2030年の世界需要を40万トン超と見込み、茅ケ崎工場で生産する装置によって世界需要の15%程度を賄えると試算しています。ただし、中国の自社工場でも同規模の生産能力を維持し、主に中国市場向けに出荷を続ける予定です。

<プレスリリース> 株式会社アルバック 2026年5月1日発表
アルバック、レアアース磁石向け真空溶解炉の国内生産体制を構築
~欧米を中心に受注が前期比約3倍に拡大見込み~
株式会社アルバックのレアアース磁石向け連続式真空溶解炉の受注が、欧米の磁石メーカーを中心に前期比約3倍に拡大する見通しです。当社はこの受注拡大に対応するため、当該装置の日本国内における生産体制を新たに構築することといたしました。従来の中国拠点に加え日本拠点を整備することで二極供給体制を確立し、お客様に多様な供給選択肢を提供してまいります。

レアアース磁石向け連続式真空溶解炉
背景
レアアース磁石は、電気自動車、風力発電、空調機器、データセンター、宇宙産業など、幅広い産業の先端機器に不可欠な基幹部材です。脱炭素化とAI普及の進展に伴い、世界需要は今後も拡大が見込まれる一方、中国への高いサプライチェーン依存度を背景に、欧米を中心としたニアショアリング(生産の地域分散)が加速しています。
当社はこれまで、中国の子会社においてレアアース磁石向け真空溶解炉を製造し、長年にわたり同市場のお客様のご要望にお応えしてまいりました。同拠点は、今後も中国市場のお客様への安定供給を担う重要な製造拠点です。一方、欧米を中心とする新規磁石メーカーからは、地域分散を重視した供給体制を希望される声も高まっており、こうしたグローバルな需要拡大に対して安定的な装置供給を実現するため、このたび日本国内での生産体制を新たに構築することといたしました。
日本国内生産の概要
項目 内容
対象製品 :連続式真空溶解炉
国内生産能力 :年間最大12台
国内拠点立ち上げ: 2026年9月予定
出荷開始時期 順次出荷予定
当社の強み
当社は1952年の創立以来、真空溶解装置および蒸着装置の国産化に取り組み、約70年にわたり技術を蓄積してまいりました。レアアース磁石の製造において中核となる溶解・焼結・時効などの真空工程向けに、各種装置を幅広く取り揃えている、世界でも稀有な装置メーカーです。主要工程の連続式真空炉では、それぞれ世界シェア7割以上(当社調べ)を有しています。今回国内生産体制を構築する連続式真空溶解炉は、磁石材料の出発点となる溶解・鋳造工程を担う装置であり、この工程で形成される合金組織が最終的な磁石性能を左右します。当社は累計400台以上の真空溶解炉を納入しており、磁石製造プロセスに求められる高い生産技術力が、長年、世界の大手磁石メーカーから評価されています。

今後の展開
レアアース磁石市場では、新規参入メーカーの増加に伴い、装置単体の提供にとどまらず、量産ラインの立上げ支援を求めるニーズが高まっています。当社は、真空溶解炉をはじめとするレアアース磁石向け製造装置のさらなる安定的な供給体制を拡張するとともに、量産ライン全体の最適化支援へと事業領域を拡大し、磁石量産技術の統合エンジニアリング企業を目指してまいります。
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