NeoMagセミナー

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ここが知りたいネオジム磁石のすべて

01.ウェブセミナーを始めるにあたって
皆さんこんにちは・・・ネオマグ株式会社、技術部長の山下です。日ごろ弊社製品のご愛顧まことにありがとうございます。今回、多くのお客様からご要望がありました、永久磁石の「ウェブセミナー」を弊社ホームページ内に開講いたし...
02.永久磁石の起源(1)-西欧     
西欧では紀元前600年頃、ギリシアのマグネシア地方に天然の磁鉄鉱(Fe3O4)・マグネタイトが産出し、この鉱石が羊飼いの鉄の杖や、他の鉄製品を引き付けたりしたので、この地方の地名にちなんで“マグネス”と呼ばれ、それが長い間に“マグネット”に変わったと言われています。
03.永久磁石の起源(2)-中国
中国の古文書「呂氏春秋」によると、西欧のマグネットと同じ頃、すでに中国でもこのような鉱石が当時の慈州にあり、且つ母親の二つの乳房のように慈愛深く乳児をひきつけることから“慈石”と書かれていました。二つの乳房はもちろんN極、S極のことです。
04.羅針盤の進化と大航海時代
中国、宋の時代(1100年~1600年)になりますと、磁石は磁鉄鉱を細く薄く加工して作られるようになり、火薬、印刷技術と並ぶ中国三大発明の“羅針盤”の登場となりました。
05.電気磁気学・磁石理論の誕生
ウィリアム・ギルバート(1540~1603年)は、医学の他に電気磁気学に興味を持ち、忙しい合間をぬってさまざまな実験を行っていました。実験と論文を参考にしながら“磁石論”をまとめていったようです。
06.磁石の吸着力・吸引力はクーロンの法則から
フランスのシャルル・ド・クーロンは建築技師としての陸軍工兵中尉でしたが、磁気コンパスに関する論文でパリ・アカデミー賞を受賞し、1787年“クーロンの法則”を発表しました。
07.各種基本法則の発見-発電機・電動機の発明へ
1820年はまさに電磁気学の夜明けといっても良い年になりました。 デンマークの物理学者ハンス・クリスチャン・エルステッドは、ボルタ電池を使い電流の実験をしていた際に、導線に電流が流れると、近くに置いた方位磁石が振れることを見つけ、“電流の磁気作用”を論文として発表し、世界中の科学者の注目を浴びました。
08.モーターと発電機の原理-フレミングの法則
1885年頃イギリスのジョン・フレミングが発表した「フレミングの法則」はモーターと発電機の電磁誘導の原理をわかりやすく説明したものとして、今でも理科・科学教育の場面で盛んに利用されています。
09.古典電磁気学確立-マクスウェルの電磁方程式
ファラデーの電磁気理論をもとに、スコットランドのジェームズ・クラーク・マクスウェルは、1864年、「電磁方程式」を 導き出し、古典電磁気学を確立しました。
10.永久磁石は夢をかなえる魔法の道具
17世紀以降、永久磁石の不思議な力に魅了されて、多くの永久機関のアイデアが出されてきました。そんな中で、1832年、フランスのピクシーが”手まわし発電機”を発明しました。
11.原子構造の解明と量子論の導入
1903年、ジョゼフ・ジョン・トムソンは、球状に分布している正電荷の中に電子が存在している“原子模型”を提案、同年日本の長岡半太郎も今日のモデルに近い“土星型原子模型”を発表しました。
12.電磁石が作る磁界・磁力の根源
電磁石の磁界・磁力は電荷を持った粒子つまりマイナスの電荷を持った自由電子が動くことにより発生する。
13.永久磁石・強磁性体の磁力の根源
電子のスピンという自転運動と軌道運動である公転の運動が磁性体の磁力の元となっているということです。これらの方向と大きさを持っている電子の磁力をスピン磁気モーメントや軌道磁気モーメントなどと呼んでいます。
14.永久磁石の磁力は原子の中の電磁石から
スピン磁気モーメントこそが、磁性の主な源であったわけです。わかりやすくいえば、永久磁石や強磁性体の磁力は原子の中の電子の回転による小さな電磁石の集合が作っていることになります。
15.素粒子フォトンが媒介する電磁力
宇宙には「電磁力」、「重力」、「弱い力」、「強い力」の「4つの力」があると言われています。そしてこの4つの力の伝搬については、場の代わりに「ゲージ粒子」という力を伝える素粒子で説明できます。この中で静電気力、磁力を伝えるゲージ粒子は「フォトン(光子)」であるとされています。
16.各種磁性の磁気モーメント配列
磁気の性質・磁性は前の章で話をしました磁気モーメントの並び方や大きさにより数種類に分類されます。まず、永久磁石を代表とする磁性材料のほとんどは強磁性という分類になります。強磁性のうち、「フェロ磁性」はすべての磁気モーメントが一定方向にそろった自発磁化をもちます。また、「フェリ磁性」はある方向に並んだ磁気モーメントが逆向きのものより大きいか、数が多いため、トータルとして自発磁化をもつものを言います。
17.永久磁石を発展させた磁区の解明 
20世紀初頭は原子物理学の急速な進歩と共に、磁性科学の飛躍的な発展がありました。一方、原子レベルの量子力学的な理論解明だけでは現実的な実用材料の進歩がありません。そこで大きな貢献を果たしたのが磁区という目に見える「ミニ磁石」の構造の解明でした。
18.近代永久磁石の発展と実用化の歴史
1800年代までは、磁鉄鉱や、鉄を鍛造・焼入れした磁石を、磁石=羅針盤という使い方をしていた時代が長く続いていました。そして、その磁界や吸着力を工業的に応用できる強力な永久磁石が登場したのは、ようやく20世紀に入ってからになりますが、その後の近代磁石の発展の歴史には、実は日本人や日本の技術が大きな貢献をしてきたのです。
19.ネオジム磁石誕生の裏話
日本のネオジム焼結磁石の世界的特許は当時の住友特殊金属株式会社の佐川眞人博士が中心となって出願されました。しかしながら、その発明の原点は佐川博士が富士通株式会社の研究所に在籍していた頃でした。
20. ネオジム磁石の結晶構造と基本磁気特性(1)
ネオジム磁石がなぜ強い磁石になったのか、その基本的な磁気の性質・磁性について考えてみましょう。 ある磁性材料が強力な永久磁石になるための基本的な磁性の要件は次の3つになります。一つは、大きな飽和磁化Jsです。飽和磁化の大きさが大きいほど磁石は強くなります。
21. ネオジム磁石の結晶構造と基本磁気特性(2)  
前のページで強力な永久磁石である三つ目の要件として「保磁力Hcj」が大きいことをあげました。 このHcjの大きさを左右する基本的な磁性が「異方性磁場HA」で、「異方性磁界」ともいいます。 このページの図表はこの異方性磁場HAについてあらわしています。
22.現在の商用磁石の分類
現在、工業的に使われている永久磁石を分類すると、おおよそこの図のようになります。 大分類は、 (1)陶器のような酸化物を材料とした「セラミック磁石」 (2)金属材料でできている「金属磁石」 (3)ゴムやプラスチック樹脂に磁石材料を混合して固めた「ボンド磁石」 となります。
23.各種磁石の磁気特性分布と特徴
この図は主な磁石の磁気特性分布とその特徴の概要です。「ネオジム焼結磁石」は後の章でも詳しくお話をしますが、実用磁石としては最高性能の磁石で、生産量が着実に増加しています。
24.各種永久磁石の主成分(組成)
ネオジム磁石,Nd,Fe,B,Dy,サマコバ磁石,Sm,Co,Cu,フェライト磁石,酸化鉄,Fe2o3,酸化ストロンチウム,SrO,アルニコ磁石,Al,Ni,Co,Fe,Cu,
25.各種永久磁石の強さ(吸着力)比較
1980年代後半、ネオジム磁石が実用化された直後、人々はその強力な吸引力に驚きました。 この図はネオジム焼結磁石がどれほど強いかを模式的に表したもので、色々な永久磁石の強さを、鉄板に吸着した磁石で人がどれほどの人数でぶら下がることができるかということで比較してみました。
26.ネオジム焼結磁石の世界生産量推移
このグラフは、ネオジム焼結磁石の世界の生産量推移をネオマグ株式会社が推定したものです。 世界シェアはおおよそ中国が78%、日本が20%、ヨーロッパが2%で、中国の生産量が突出しています。
27.ネオジムボンド磁石の世界生産量推移
これはネオジムボンド磁石の世界生産量の推移で、日本ボンド磁性材料協会JABMなどの資料を参考に、ネオマグ株式会社が推定したものです。日中合弁を含めた世界シェアは中国生産が約75%でこのネオジム磁石も中国の生産量がトップとなっています。
28.ネオジム焼結磁石の用途別生産比率
この円グラフはネオマグ株式会社推定の日本と中国のネオジム焼結磁石 用途別生産量の比率を示しています。
29.世界の主なネオジム焼結磁石メーカー
この表は、世界の主なネオジム焼結磁石のメーカーをネオマグ株式会社が調べたものです。 各メーカーの詳細な生産規模については現在調査中ですが、ごらんのように生産規模の大きいメーカーは中国に多いことがわかります。
30.ネオジム焼結磁石の製造工程概要
これからネオジム焼結磁石の製造方法全体について矢印の順に説明をしてゆきます。 個々の重要工程については、後の章でそれぞれについて詳細に説明いたします。
31.溶解工程(磁石合金の製造)
配合、混合された原料金属は、高周波溶解炉でおよそ1200℃に加熱されて、溶解・合金化させます。溶解炉の中は合金が酸化しないよう、真空にしておきます。なお、アルゴンガスのような不活性ガスを一部加える場合があります。
32.粉砕工程(合金粉砕の目的・原理)
次に合金を粉にする粉砕工程になります。なぜ、粉砕して粉にするかといいますと、 ひとつの理由は、次の成形工程で必要な形にするために金型の中で圧縮成形するためです。 二つ目の理由は、成形時に磁場をかけて結晶の方向を「磁化容易軸方向」の一定の方向に並ばせて強い「異方性磁石」にしたいためです。
33.微粉砕工程(ジェットミル粉砕)
それでは実際の粉砕工程はどのようになっているかといいますと、まず薄板状の合金インゴットは粗粉砕機で「あら粉砕」した後、水素炉で水素を吸蔵させてもろくさせる「脆化処理」を行います。そして、下の写真のような「ジェットミル」という粉砕機で超音速の窒素気流によって数ミクロンまで「微粉砕」します。
34.ネオジム磁石の成形工程(磁場成形)
この図は磁場成形機の磁場を発生するコイルと金型付近だけを模型的に示した図になりますが、実際の成形機はそのほか頑丈なフレームや油圧システムなどで構成されています。
35.ネオジム磁石の成形工程(CIP・RIP)
直交磁場成形法で成形されたような大きな成形ブロックは、大きな成形圧力が必要なため、成形機によっては成形密度が不足している場合があります。そのような場合は、この図のように、再度圧縮成形を加えます。この成形工程では磁場は加えません。
36.ネオジム磁石の焼結・熱処理工程(焼結炉・熱処理炉)
焼結工程では、成形体の密度を100%近くするために約1100℃で焼き固めます。その後焼結温度より低い温度で熱処理を行い、焼結体の結晶組織を適正な組織に制御します。 焼結炉、熱処理炉は真空や真空にアルゴンガスなどの不活性ガスを一部混ぜた「雰囲気」を使います。
37.ネオジム磁石の焼結・熱処理工程(温度パターン・組織写真)
左の図はネオジム磁石の代表的な焼結・熱処理パターンです。バッチ式の炉であれば、炉室内の温度をこのようにプログラム制御させます。また、連続式の炉であれば、成型後の製品を各温度に設定された複数の炉室の中を自動で移動させることになります。
38.ネオジム磁石の加工工程-1(切断加工)
ネオジム磁石の切断には「内周スライサー」や「外周スライサー」を使います。ネオジム焼結体は「ビッカース硬度」が600近くで硬いため、「人工ダイヤモンド」を使った「ブレード」を使います。外周スライサーは複数のブレードによる「マルチ切断」を使うことが多いようです。
39.ネオジム磁石の加工工程-2(平面研削加工)
ネオジム磁石の「研削・研磨」には各種「平面研削盤」を使用します。やはり人工ダイヤモンドの砥石を使います。
40.ネオジム磁石の加工工程-3(外周研削加工)
円柱型やリング型ネオジム磁石の丸形母材の外周加工には円筒研削盤(センターレスグラインダー)を使います。砥石はやはり人工ダイヤモンドとなります。
41.ネオジム磁石の加工工程-4(放電加工)
細穴あけ加工や複雑形状加工には「放電加工機」を使います。特に「ワイヤー放電加工機」はネオジム磁石の複雑加工には頻繁に使われます。簡単な穴あけ加工には「ドリル加工機」が使われることもあります。
42.ネオジム磁石の加工工程-5(加工量産ライン例)
この写真はある中国メーカーの加工工程です。左上は「自動外周マルチ切断機」のラインで、右下は「ワイヤー放電切断加工」のラインです。中国メーカーの加工ラインは母材からの形状加工が多く、したがって、このように母材の切断、切り出し、穴あけなどの加工機を数多く並べています。
43.錆びやすいネオジム磁石
ネオジム磁石の成分である、ネオジムなどの希土類金属は酸化しやすい、つまり錆びやすいため、磁石形状や使用される環境によってその度合いは異なりますが、そのままでは、空気中の水分や酸性のチリなどにより錆が発生します。
44.ネオジム磁石の各種表面処理方法
現在の量産磁石の多くは、「銅+ニッケルの二層電気めっき」または「ニッケル+銅+ニッケルの三層電気めっき」になっています。しかし、温度や湿度に対して使用環境が比較的良好な場合は「アルミコート」や「無機ガラスコート」、各種「樹脂塗装」なども行われています。
45.ネオジム磁石の電気ニッケルめっき
この図と写真は、電気ニッケルめっきの代表的な工程と量産ラインです。三層めっきの場合はこの後銅めっきを施し、さらに同様なニッケルめっきの工程を通します。なお、少量生産の場合は、自動ラインを使わず、バッチ式の工程を使います。
46.ネオジム磁石の着磁工程
磁石を磁化するための着磁工程には、「着磁電源」と「着磁コイル」が必要です。量産の場合の着磁方法は「コンデンサーパルス着磁器」を使います。永久磁石を飽和まで磁化させることを「フル着磁」と言いますが、パルス着磁はある一定以上のパワーが必要となります。
47.ネオジム磁石の工程/製品の評価・検査(1)(原料・合金の分析機器)
合金製造工程で受け入れる原料金属の組成・成分や溶解工程で製造された合金の組成分析には蛍光X線分析装置やICP発光分析装置が使われます。 また、原料や合金、焼結体の酸化度合を計る酸素分析装置、原料不純物や成形バインダーなどによる残存炭素量を計る炭素分析装置などのガス分析装置が使われます。
48.ネオジム磁石の工程/製品の評価・検査(2)(粉体・めっき・環境試験機器)
評価装置としては、粉砕工程の粉末の「平均粒度」や「粒度分布」をチェックするための「レーザー式粒度分布測定装置」、製品の「めっき膜厚」を管理するための「蛍光X線膜厚計」などがあります。 「耐候性加速テスト」には「恒温恒湿試験機」や「プレッシャークッカーテスト(PCT)」試験機などを使います。
49.ネオジム磁石の工程/製品の評価・検査(3)(磁気特性の測定・評価装置)
これらの写真は磁石の磁気特性測定・評価のための装置です。 左の写真は磁化曲線を描き、測定するためのB-Hトレーサーと呼ばれる装置です。 通常は磁気履歴曲線・ヒステリシスカーブの第二象限の減磁曲線だけを測定します。
50.ネオジム磁石の各種耐候加速試験
表面処理を施したネオジム磁石の環境試験にはこのページのような代表的な加速試験があります。恒温恒湿試験は一定の温度、一定の湿度の恒温恒湿試験装置で行います。 標準的な条件には 温度60℃、湿度90%、1000時間、温度85℃、湿度85%、250時間 などがあります。
51.ネオジム磁石の各種表面処理と恒温恒湿加速試験
これは比較的厚みが薄いリング型のネオジム磁石についての、温度80℃、湿度90%の「恒温恒湿試験」のデータ例です。表面処理方法の違いによって、耐候性能が異なることがわかります。
52.ネオジム磁石の各種表面処理とPCT加速試験
これは比較的厚みが薄いリング型ネオジム磁石についての各表面処理の違いによる「PCT加速試験」のデータ例です。 この加速試験での24時間は前ページの恒温恒湿試験と同じ東京の年平均温度15℃、平均湿度65%では約20年に相当します。
53.永久磁石の磁気特性と磁化曲線
磁化曲線は磁気履歴曲線やヒステリシスループとも呼ばれ、一般的にはJH曲線またはBH曲線であらわす。 JH曲線とBH曲線の違いは、JH曲線は外部磁場に対する永久磁石自身の磁化の大きさの変化をあらわし、BH曲線は外部磁場も含めた磁気回路の中の磁化の大きさの変化をあらわす。
54.永久磁石の磁化曲線と各種透磁率
透磁率とは磁束の通り易さをあらわす。初磁化曲線上のBとHの比を透磁率μ=B/Hといい、原点付近のものを初透磁率μi、最大のものを最大透磁率μmと呼んでいる。また、真空の透磁率μ0との比を比透磁率μsという。そのほか、減磁曲線上のリコイル透磁率μrec、リコイル比透磁率μrなどがある。
55.永久磁石の最大エネルギー積と角形比
永久磁石の強さ、優秀さの基準の一つに「最大エネルギー積・(BH)max」という磁気特性があります。これは、磁石が持つエネルギーの大きさをあらわし、B-H減磁曲線上の磁束密度Bと磁場Hの積の最も大きな数値を指します。SI単位ではkJ/m3、CGS単位ではMGOeで表します。
56.永久磁石の反磁場とパーミアンス係数
あらゆる形の磁石には磁化と反対方向の磁場つまり「反磁場」が必ず発生します。永久磁石のほとんどの磁束・磁力線はNからSに向かって磁石の外を通っていますが、中には磁石の中をショートパスするものもあります。
57.永久磁石の寸法比とパーミアンス係数
永久磁石が単体で存在する場合の「パーミアンス係数Pc」は、磁石の形状に大きく左右され、複雑な計算が必要となります。このグラフは円柱型(Di=0)、リング型、角型のそれぞれの磁石について、計算をした結果で、各形状の寸法比とパーミアンス係数の関係を示しています。
58.永久磁石の動作点とパーミアンス直線
永久磁石の動作点とは磁石単体の場合、磁石の形状(寸法比)によって決まる反磁場の大きさによってその磁気的な動作が決まるBH減磁曲線上の位置(座標)を表します。
59.永久磁石の形状と表面磁束密度・空間磁束密度
このグラフは横軸に磁石の厚みまたは高さ、縦軸に磁束密度をとって、ネオジム磁石N50の鉄板と磁石のギャップ距離X=0の「表面磁束密度」およびギャップ距離X=5mmの場合の「空間磁束密度」と「パーミアンス係数」との関係を示したものです。
60.永久磁石の形状と鉄板の吸着力(吸引力)
磁石の磁化方向の厚み・高さが大きいほど吸引力は大きくなりますが、ある大きさ以上になりますと吸引力の増加は期待できなくなるということを意味しています。
61.永久磁石のギャップ距離と空間磁束密度
このページでは、磁石からの「ギャップ距離」に応じて「空間磁束密度」がどのように変化するかをみてみましょう。 サンプル磁石はパーミアンス係数が2の角形・長方形のネオジム磁石です。
62.永久磁石のギャップ距離と吸引力
単体磁石と鉄板、バックヨーク付磁石と鉄板、NS向い合せた磁石と磁石の3種類の組み合わせについてその「吸引力」を調べてみました。サンプルはネオジム磁石の角形・長方形を選んでみました。データはすべてモレ磁束ゼロを仮定した近似計算によるものです。
63.永久磁石の表面・空間磁束密度の近似式(1)         
これらの式は磁石単体についての「磁束密度近似計算式」です。条件としては、磁極面のほぼ中央から垂直方向つまり磁化方向での磁束密度となります。また、リング型磁石は内径穴の中心軸上についての計算です。
64.永久磁石の表面・空間磁束密度の近似式(2)
左上の図は磁石の片面が鉄板などの磁性体についている場合、あるいは鉄板などのバックヨークを付けた場合の計算方法です。ただし、鉄板、「バックヨーク」は磁気飽和しない厚みを必要とします。
65.永久磁石の吸着力・吸引力の近似式
この式は吊り上げ用電磁石や磁力応用工具などで良く使われる簡易計算式ですが、誤差も大きいため目安としての使われ方をされているようです。ここでは、この式が導き出された計算過程については省略いたしますが、この式を永久磁石にあてはめるとどうなるか検証してみました。
66.各種永久磁石の温度・機械・物理特性比較
この表は、各種磁石の温度特性・機械特性・物理特性を比較したものです。 まず温度特性についてです。この中で温度係数とは、磁石温度が1℃上昇した時の磁気特性の変化率を示したもので、「残留磁束密度Brの温度係数」と「保磁力Hcjの温度係数」を示しています。
67.各種永久磁石のBr温度変化率(20℃基準)
このグラフは「ネオジム磁石」、「サマコバ磁石」、「フェライト磁石」の20℃を基準とした「残留磁束密度Brの温度変化率」を示したもので、前のページで示しました各磁石の温度係数によって、温度変化率も異なっています。
68. 各種永久磁石のHcj温度変化率(20℃基準)
ネオジム磁石、サマコバ磁石、フェライト磁石の20℃を基準とした「保磁力Hcjの温度変化率」を示したグラフです。これも各磁石の温度係数によって、温度変化の様子が異なっています。各温度のHcjの値はその温度で測定した結果の数値を意味しています。
69.ネオジム磁石の温度特性と減磁曲線
この図は永久磁石の磁気特性と磁化曲線の章でお話をしました磁気履歴曲線(ヒステリシスループ)の「第二象限の減磁曲線」、「JH曲線」と「BH曲線」で、ネオジム磁石Neo50材を20℃、50℃、100℃、150℃、200℃の各温度でシミュレーションした結果です。
70.ネオジム磁石の熱減磁-可逆減磁と不可逆減磁
着磁済みの磁石は周囲の温度が変化すると、熱エネルギーの関係で磁気特性が変化します。元の温度に戻ると磁気特性も同じ値に戻る変化を、「可逆減磁」と呼び温度が戻っても磁気特性が戻らない変化を「不可逆減磁」と呼びます。
71.ネオジム磁石の材質別磁気特性分布
各種ネオジム磁石の熱減磁の様子を解析する前に、ネオジム磁石の材質にはどのような種類があり、その磁気特性はどのようになっているかを確認してみましょう。ネオジム磁石には世界共通の正式に決められた名称や磁気特性規格値はないため、メーカーごとの規格値の詳細は少しずつ異なっています。
72.高Br・低Hcj磁石の減磁曲線と不可逆減磁
ネオジム磁石で熱による不可逆減磁がどのような状況で起こるか、またどうしたら防げるか考えてみましょう。まず、大きなエネルギー積、大きなBr値を持っていますが、保磁力Hcjが低いNeo50材についてみることにいたします。
73.高Br・低Hcj磁石の形状と不可逆減磁
大きなBHmaxと大きなBrを持ったネオジム磁石は保磁力Hcjが相対的に小さく、80~100℃の温度での使用が必要な場合は、なるべく磁化方向の厚みを厚くした形状にした方が良いということになります。
74.中Br・中Hcj磁石の減磁曲線と不可逆減磁
SH材質は、150℃から200℃前後への温度上昇の可能性があったり、それほど高温ではない使用環境でも、磁気回路の中で強い逆磁場がかかったり、磁石を薄い形状にせざるを得ない場合などに良く選択される材質です。
75.中Br・中Hcj磁石の形状と不可逆減磁
SH材質は、200℃ではパーミアンス係数が2.0では問題なさそうだが、1.0では7%ほどの不可逆減磁を起こしている。パーミアンス係数が0.5では200℃の使用は無理だが、150℃では5%程度であるから大きな不可逆減磁の心配はない。
76.低Br・高Hcj磁石の減磁曲線と不可逆減磁
これはHcjがかなり大きなNeo38EH材の減磁曲線です。 EH材質は、どちらかといいますと高温使用対策用であり、200℃~250℃までの温度上昇でも大きな不可逆減磁が起きない材質として使われています。
77.低Br・高Hcj磁石の形状と不可逆減磁
EH材質は、不可逆減磁率が10%以内であれば容認するとして、パーミアンス係数が0.5以上であれば250℃使用は問題ないといえる。わずかでも不可逆減磁を避けたい場合は、使用予定最高温度での熱からしを推奨する。
78. ネオジム磁石の着磁率と不可逆減磁
ネオジム磁石は着磁が不十分だと初期の磁気特性値が低下するだけではなく、減磁曲線の角型性も低下する場合が多いため、温度が戻っても動作点の戻りが極端に悪くなり、熱による不可逆減磁が大きくなる。
79.永久磁石に使われるレアアース(希土類)
これは元素の周期律表ですが、サマリウムコバルト磁石やネオジム磁石は希土類磁石、レアアースマグネットなどと呼ばれていますようにランタノイド族の希土類金属・レアアースが使われています。
80. 世界の国別レアアース埋蔵量と生産量
<レアアースの埋蔵量・生産量>ネオジム、ジスプロシウム、サマリウムなどの希土類元素は酸化物やフッ化物の形で希土類鉱石の中に複数種含有されている。この中で最も希土類の埋蔵量が多い国は世界の約36%を占める中国で次にブラジル、ベトナム、ロシア...
81. ネオジム磁石の保磁力とDy含有量
次図は標準的なネオジム磁石について、保磁力Hcj、エネルギー積BHmaxの関係と、各磁気特性の磁石がどのような用途に使われているか、またそれらの磁石にどれくらい「ジスプロシウムDy」が含まれているかをあらわしている(但し、「テルビウムTb」を代用する場合もある)。
82. Dy含有量を減らす(1)-結晶の微細化と低酸素化技術-
国内各メーカーはネオジム磁石のHcjを低下させることなく、いかにジスプロシウムDyの含有量を減らせるかを考えてきた。その方法のひとつとして焼結体の結晶粒を微細化するとHcjが増大することに着目して技術開発を行った。
83. Dy含有量を減らす(2)-Dy粒界拡散磁石-
ネオジム焼結磁石の逆磁区の発生し易い粒界近傍に異方性磁場HAを高めるジスプロシウムを集中させ、主相は低ジスプロシウム組成にして高Brにする技術・「Dy粒界拡散法」が実用化されている。
84. Dy粒界拡散磁石の応用-保磁力分布磁石
次図は前ページの粒界拡散磁石の応用技術を紹介したもので、信越化学工業が発表している。磁石の一部をジスプロシウムの濃度を高めた「塗布型の粒界拡散磁石」になる。
85.Dy含有量を減らす(3)-熱間加工磁石-
超急冷法によって作られたネオジム・鉄・ボロン(NdFeB)粉末をホットプレスしたのち、高度な熱間加工により成形して異方性磁石にする製法が「熱間(押出し)加工」であり、大同特殊鋼(ダイドー電子)がこの製法を開発した。
86.NdおよびDy含有量を減らす –省ネオジム耐熱磁石–
トヨタ自動車は、「高耐熱ネオジム磁石に必要な重希土類のテルビウムやジスプロシウムを使わないだけでなく、ネオジムの一部を、希土類の中でも安価で豊富なランタン(La)とセリウム(Ce)に置き換えることでネオジム使用量も削減した」新開発磁石を発表した。
87. 期待される新規ネオジム磁石化合物
ハイブリッド自動車の駆動モーターとして使われているネオジム磁石よりも少ないレアアースで、同等以上の優れた磁気特性を持つ新規磁石化合物 NdFe12Nxの合成に、物質・材料研究機構の宝野和博フェローのグループが成功した。
88.脱希土類・鉄ニッケル超格子磁石
デンソーが主体となった産学連携グループは、新たに考案した窒化脱窒素法/NITE法という規則合金形成プロセスにより、FeNi超格子磁石材料の高純度合成に初めて成功しました。
89.お薦めの図書&セミナーのおわりに
永久磁石、ネオジム磁石に関する図書は数多くありますが、ここに上げたものはネオマグが推奨する図書一覧です。専門書としてはネオジム磁石発明者の佐川博士や希土類磁石の発展に尽くされた故浜野博士の著書が特に際立っているのではないかと思いますが
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