<磁石プロの視点>
株式会社プロテリアルはインドへの生産支援制度を通して、インドを生産拠点とした原料調達から製品化に至る重希土類フリーのネオジム磁石の量産・供給体制確立に向けた検討を始めました。早ければ2029年からインド国内のローカル企業と同国に進出する日系企業向けで年間1200トン(インドが計画する年間生産量の2割に相当)の供給を計画しています。
インドはレアアースの資源大国であり、現在までその資源を十分活用できていませんでした。また、電力は石炭火力が中心であり、これからの電力需要の増大に応えるためには輸入に頼らざるを得ない石油、天然ガス資源ではなく、再生可能エネルギーおよび原子力発電の大規模拡大を計画しています。
その中で浮かび上がったのが、国内自動車産業を活性化するための乗用車、二輪・三輪車の電動化推進事業です。これらの背景により、インドのEV国内生産推進とレアアース資源活用のための一環として、プロテリアルの「ネオジム磁石のインド生産開始計画」に繫がっていきます。
今回のプロテリアルのネオジム磁石生産のインド進出は、まさに中国に支配されないレアアース事業として、両国の利害が一致した結果だといえるでしょう。
※インドのレアアース(希土類)資源
埋蔵量: インドは世界第5位、約690万トンのレアアース埋蔵量を持ち、インド東部・南部沿岸のモナザイト砂(モノザイト)に希土類が含まれます。モナザイトには重希土類とされるDy、Tbなどの含有量は1%にも満たない量ですが、ネオジム(Nd)は15~20%も含有されています。
現在の生産量:しかしながら、 埋蔵量は豊富ですが、民間投資が限定的なため、実際の生産量は希土類全体で年間2,900トン程度にとどまっています。ネオジムに限ればほぼ手つかずの資源と言ってもよいでしょう。
中国への対抗策: 2025年以降、インド資源大手(ヒンドゥスタン・ジンクなど)が開発へ本格参入し、中国の独占的地位に対抗するためのサプライチェーンを構築中であり、国際連携として、日本やブラジル、カナダ等と連携し、探査、採掘、加工、リサイクルの技術・資金提携を進めています。
政府の支援: 焼結レアアース磁石の国内製造に向け、約728億ルピー(約1,310億円)規模の支援スキームが承認されています。
今後の見通し: 国内需要(EV・再エネ)の拡大と政府の強力な支援により、軽・中希土類やネオジム磁石の中国以外の世界の主要供給源となる可能性が高いといわれています。

<Bloombergニュース>2026年4月1日
--ベイン系プロテリアル、印レアアース磁石の生産支援制度への申請検討--
プロテリアル(旧日立金属)は、レアアース(希土類)磁石の国内生産を促進するインドの支援制度への申請を検討している。中国からの輸入依存の低減を目指すインド政府の取り組みを後押しする動きだ。事情に詳しい関係者によると、同社は総額728億ルピー(約1200億円)規模の補助金制度への申請を検討しており、インドのパートナー候補と初期段階の協議を進めている。協議は非公開のため関係者は匿名を条件に語った。検討は継続中で、正式な申請に踏み切るかについては最終判断に至っていないという。
プロテリアルは、中国勢を除けば世界有数のレアアース永久磁石メーカーの1つ。1980年代に高効率モーターに不可欠なネオジム磁石の開発を先導し、現在は米ベインキャピタルが主導するファンド連合が出資する。
世界最大のレアアース生産国である中国は昨年4月、国際的な駆け引きの材料として輸出規制に踏み切り、一部のインド自動車メーカーでは生産に影響を及ぼし、代替調達を迫る事態となった。インド政府の支援制度は、電気自動車や風力タービン、防衛用途向けの需要拡大に対応するため、レアアース磁石の生産能力を年間約6000トン引き上げることを目的としている。同国はレアアースの埋蔵量は豊富だが、精製能力の不足が国内供給拡大の制約となっている。
関係者によると、この制度は技術力で先行する企業の参入と同時に、インド国内企業との連携も促す設計となっている。
<参考:ニュースリリース>株式会社プロテリアル 2025年7月22日
--EV駆動モーター用高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石を開発--
株式会社プロテリアル(以下、プロテリアル)は、重希土類を全く使用せず、EV(電気自動車)の駆動用モーターにも使用可能な高残留磁束密度(Br)と高保磁力(HcJ)を両立した高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石を開発しました。本製品の高い磁気特性により、重希土類の資源枯渇リスクを回避するとともに、モーターの高トルク化や小型化、高効率化による省エネルギー、CO2排出量削減に貢献します。

1.背景
世界的なカーボンニュートラルの潮流により、自動車や航空機の電動化が急速に進められています。これらの用途で使用されるモーターは、100℃以上の高温にさらされるため、モーター部品として使用される磁石にも高耐熱性が求められます。モーターの高トルク化や小型化には高い磁気特性を持つネオジム焼結磁石が適しますが、耐熱性を向上させるために重希土類※3を添加する必要があります。しかし、重希土類は軽希土類に対して埋蔵量が少ないことから、需要の拡大が見込まれる中で、価格が大きく変動しやすいことや、資源枯渇リスクが高いことが課題となっています。そのため、重希土類使用量削減や不使用(フリー)化のニーズが年々高まっています。
2.概要
プロテリアルは、これまでも重希土類を使用せずに耐熱性を高めた重希土類フリーネオジム焼結磁石の開発、量産を行ってきました。今回、高まるニーズに対応するため、当社独自の組織・組成制御技術により、残留磁束密度(Br)と保磁力(HcJ)を飛躍的に向上させたEV駆動モーターに使用可能な高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石NMX™-F1SH-HF材、NMX-G1NH-HF材の開発に成功しました。
NMX-F1SH-HF材は、電動パワーステアリングやコンプレッサー等に加え、駆動用モーターにも使用可能なBr=1.40T、HcJ≧1671kA/mの磁気特性を有し、既に量産工場での試作サンプルの提供を始めています。
また、NMX-G1NH-HF材は高トルク高耐熱が必要な駆動用モーターにも使える重希土類フリー材であり、100℃以上の環境において使用できるBr=1.42T、HcJ≧1830kA/mの磁気特性を研究所設備にて達成しました。今後、量産性を検証し、2026年4月には量産工場での試作サンプル対応が可能になる予定です。
3.プロテリアルの省重希土類技術、重希土類フリー技術
プロテリアルは、ネオジム焼結磁石分野のトップ企業として、長年にわたる研究開発の結果、世界中で600を超えるネオジム焼結磁石の特許、日本で200を超える特許のポートフォリオを構築し、ネオジム焼結磁石NEOMAX®として製造・販売を行っています。近年は特に重希土類フリーの最強のネオジム焼結磁石を世に出したいという強い思いから、省重希土類技術の開発と並行して、重希土類フリー技術の開発および特許出願に注力し、特許のポートフォリオを強化しています。
図は、プロテリアルの高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石の磁気特性マップです。第1世代のNMX-S49F材に対して、当社独自の製法による不純物コントロールと組成・プロセスの最適化により、HcJとBrを飛躍的に向上させた新開発の高性能重希土類フリー磁石が、今回、開発に成功したNMX-F1SH-HF材とNMX-G1NH-HF材です。
NMX-F1SH-HF材は、電動パワーステアリングやコンプレッサー等に加え、駆動用モーターにも使用可能なBr=1.40T、HcJ≧1671kA/mの磁気特性を有しています。さらに、NMX-G1NH-HF材は高トルク高耐熱が必要な駆動用モーターにも使える重希土類フリー材を開発してほしいという強いニーズにお応えしたBr=1.42T、HcJ≧1830kA/mの磁気特性を研究所設備にて達成しました。

4.モーター材料の総合メーカーとして
プロテリアルは、ネオジム磁石だけでなく、資源リスクが比較的小さくコストパフォーマンスに優れたフェライト磁石NMF®の製造・販売も行っています。また、モーターの高性能・高効率化につながる材料として、コア(鉄芯)用アモルファス金属、エナメル線、磁性楔などを取りそろえるモーター材料の総合メーカーです。モーターに関するお客さまの課題解決のため、さまざまなモーター材料を供給し続けていきます。
表.プロテリアルの省重希土類技術、重希土類フリー技術
| 技術系統 | 適用する 省重希土類技術、 重希土類フリー技術 | 材質名 | 重希土類 使用量 対比 | 磁気特性 残留磁束密度(Br) 保磁力(HcJ) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 磁石基本組成の一部を重希土類に置換 | なし | NMX-S41EH | 10※ | Br=1.28T HcJ≧1989kA/m | 省重希土類技術、重希土類フリー技術を適用しない比較対象品の代表例として記載 |
| 省重希土類 技術 | 従来拡散技術 | NMX-U48SH | 1 | Br=1.40T HcJ≧1830kA/m | 従来拡散技術を適用した代表例として記載 |
| M拡散™ | NMX-G1NH | 約1/5 | Br=1.42T HcJ≧1830kA/m | 従来の拡散技術に対して、さらに省重希土類な当社独自の拡散技術 2019年から量産中 | |
| M拡散を改良 | NMX-H1EH | 約1/5 | Br=1.45T HcJ≧1989kA/m | 試作サンプル提供可能 | |
| 重希土類 フリー技術 | 独自の製法による不純物コントロールと組成・プロセスの最適化 | NMX-S49F | 0 | Br=1.39T HcJ≧1273kA/m | 第1世代 |
| NMX-S49FH | 0 | Br=1.39T HcJ≧1512kA/m | 第2世代 | ||
| NMX-F1SH-HF | 0 | Br=1.40T HcJ≧1671kA/m | 第3世代 今回開発、発表 試作サンプル提供可能 | ||
| NMX-G1NH-HF | 0 | Br=1.42T HcJ≧1830kA/m | 第4世代 今回開発、発表。研究所設備にて達成 2026年4月より試作サンプル提供予定 |


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