トヨタEV向け固体電解質(全固体電池材料)大型プラント来年完工-出光興産

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<磁石プロの視点>
 BEV向けのバッテリー開発競争は、実質的に全固体電池の性能競争、実用化競争に移ってきました。
サムスンSDI(韓国)、CATL(中国)、BYD(中国)、日本のバッテリーメーカー、自動車メーカー各社などが先を争っています。
 特に、トヨタ自動車は2027〜2028年にかけて、革新的な全固体電池を搭載した電気自動車(BEV)の市場投入を目指しています。そのBEVは、充電時間10分以下、航続距離1,200km超という驚くべき性能であり、出光興産や住友金属鉱山と協力し、全固体電池の量産化の課題をクリアしつつ、世界初の本格実用化を目指す大きな節目を迎えています。具体的には、出光興産とは硫化物系固体電解質の量産化で、また住友金属鉱山とは高耐久な正極材の量産化で強力なパートナーシップを結び、着々と実用化に近づいています。
 そして、このような情勢の中で、1月26日、出光興産がトヨタ向け固体電解質の大型パロットプラントの建設を開始しました。この固体電解質は硫化物系であり、トヨタと出光興産が世界に先駆けて十数年前から取り組んできた高性能固体電解質になります。トヨタの材料技術と出光興産の製造技術が見事に融合した結果だといえます。
 現在のBEVの欠点を克服した本格的なBEVの幕開けを、予想以上に早くトヨタが担うことになるかもしれません。

※出光興産の硫化物系固体電解質とは
 全固体電池は、液体電解質の代わりに固体電解質を使用し、陽極(正極)の電極活物質にリチウム複合酸化物や陰極(負極)の電極活物質に炭素・金属材料を用いる次世代二次電池であり、高い安全性、高速充電、高容量が特徴で、固体電解質と電極の界面接合が性能向上の鍵となります。

 電解質の材料は、現在主に「硫化物系」「酸化物系」が研究されていて、それぞれ長所と短所があるといわれていますが、現在では硫化物系が主流になりつつあります。その中で、出光興産の固体電解質とその製法は、以下のような特長があります。
■高伝導率な硫化物固体電解質の合成技術
 「硫化リチウム」と「臭化リチウム」を混合・粉砕し、さらに「硫化リン」と「ヨウ化リチウム」を反応させることで、Liイオン伝導度を向上させた。
■安定した高品質化技術
  電池の耐久性と安全性を確保できる材料の組成や加工に関する技術を開発した。
■量産プロセス技術
 千葉事業所に2026年より稼働予定の大型パイロット装置(第2プラント)に向けた、効率的な量産製造法を確立した。

<ニュースリリース>出光興産株式会社 2026年1月26日
 固体電解質(全固体電池材料)大型パイロット装置の 最終投資決定および建設開始について
-要旨-
 出光興産株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:酒井則明、以下「当社」)は、全固体リチウムイオン二次電池(以下「全固体電池」)の材料となる固体電解質を製造する大型パイロット装置について、最終投資決定を行い、建設を開始しました。当社はトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」)と協業し、2027~2028年に全固体電池を搭載した電気自動車(以下「BEV」)を実用化することを目指しています。本装置で製造される固体電解質は、トヨタが開発するBEV 向け全固体電池で使用される予定です。

当社は、モビリティの進化や資源循環型社会の構築に貢献する全固体電池に不可欠な材料である固体電解質の開発と量産体制の構築を進めています。小型実証設備から大型パイロット装置へと段階的に製造装置をスケールアップし、その先の事業化へつなげる計画です。 現在稼働する2基の小型実証設備において、固体電解質の量産技術開発とサンプルの製造を実施しています。第1プラントでは主にトヨタ向けの固体電解質を、第2プラントでは異なる種類の固体電解質を開発しています。このたび、第1プラントで得られた実証結果を踏まえ、事業化に向けた次期フェーズである大型パイロット装置の建設を決定しました。生産能力は年間数百トンを見込んでいます。当社の千葉事業所(千葉県市原市)敷地内に 2027 年中の完工を目指します。なお、本装置の建設工事は千代田化工建設株式会社に発注しています。

固体電解質の量産化へ向けた技術開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/次世代蓄電池・次世代モーターの開発」の一つとして採択されており、補助を受けながら計画通りに進行しています。 また、2025年 2月に公表した固体電解質の重要な中間原料である、硫化リチウムの大型製造装置の建設についても、2027年6月の完工に向け順調に進捗しています。 当社は、固体電解質の性能向上および量産技術の開発を一層加速させるとともに、原料から製品に至る一貫したバリューチェーンの構築を着実に進め、全固体電池の社会実装を目指します。

事業ロードマップ

【参考】
・当社が手掛ける固体電解質について 原料には、石油製品の製造過程で副次的に発生する硫黄成分を使用しています。当社は、硫黄成分の有用性を 1990 年代半ばにいち早く見出し、長年にわたって培った研究力と技術力によって、固体電解質の開発に成功しました。 ・当社コーポレートサイト:社員インタビュー(リチウム電池材料部) 全固体電池のキーマテリアル「固体電解質」。まだ世の中に存在しない「材料」の開発と量産に挑むリチウム電池材料部の担当者へのインタビューです。

・プレスリリース:固体電解質(全固体電池材料)の量産技術開発が、「蓄電池に係る供給確保計画」として経済産業省より認定(2025年6月30日) ・プレスリリース:固体電解質(全固体電池材料)の量産に向け、小型実証設備 第1プラントの能力増強工事を完了(2025年4月21日)
・プレスリリース:全固体電池材料(固体電解質)の量産に向け、中間原料である「硫化リチウム」の大型製造装置の建設を決定(2025年2月27日)
・プレスリリース:2027~2028年の全固体電池の実用化に向けた固体電解質 大型パイロット装置の基本設計を開始(2024年10月28日)
・プレスリリース:次世代電池(全固体電池)向け固体電解質 供給能力の増強決定(2023年6月19日)

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