レアアース(希土類)鉱石の種類と世界分布

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<磁石プロの視点>
 米国の関税引き上げ問題とそれに関係する中国のレアアース(希土類)および関連製品の規制問題が続いています。前回も報告しましたように、米国はウクライナのレアアースで打開をしようとしていますが、解決することは難しいと思われます。それでは世界的にレアアース資源がどのようになっているかをみると、レアアース全体の埋蔵量は決して中国一国に偏っていることはありません。それでは何が問題なのかといいますと、現在の高性能磁石(ネオジム磁石)に必要なジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)などの重希土類(ヘビーレアアース)が中国のイオン吸着鉱に偏在していること、実際のレアアース鉱石生産やレアアース金属の分離精製をかなりの比率で中国に頼っていることが問題なのです。
 今後は、中国以外でのレアアース鉱石の採掘を増やすことと分離精製設備の増強を図ること、ネオジム磁石の重希土類含有を無くすことなどがレアアース問題に対する世界の大きな流れになると考えられます。
 なお、直近の情報ではオーストラリアのマウント・ウェルド鉱山を持つライナス社が、マレーシアのゼノタイム鉱を利用して、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)の重希土類を加工(分離精製)し始めたことを発表しました。これにより、レアアースのサプライチェーンにいくらかの変化が起きるとことが期待できます。

<希土類鉱石の種類と成分比>
 ここで高性能永久磁石としてのネオジム磁石について、その原料・資源について調べてみましょう。ネオジム磁石合金はおおよその重量比で、ネオジム(Nd)23~30%、ジスプロシウム(Dy)2~10%、鉄(Fe)60~65%、ホウ素(B)1%、その他コバルト、銅、アルミニウムなどの成分から構成されています。また、プラセオジム(Pr)はネオジムの一部の代替、テルビウム(Tb)はジスプロシウムの代替に使われる場合があります。
 それらのレアアース(希土類)は、酸化物やフッ化物の形で世界各地に分布・埋蔵されているレアアース鉱石から分離・精製されて抽出されます。以下の表は世界の代表的な鉱石とその主な成分を示しています。黄色の塗りつぶしはネオジム磁石に使われるレアアース成分になります。

 この表で分かるように、ネオジムは比較的多くの鉱石に含まれていて、平均的には18%ほどになります。ところが、耐熱ネオジム磁石に必要な重希土類のジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)は一部の鉱石、特に中国のイオン吸着鉱とマレーシアのゼノタイムに偏在しています。

<希土類資源の埋蔵量と生産量>
 次図は、世界のレアアースの国別埋蔵量と主な国別生産量(酸化物換算)についてです。この中で最も希土類の埋蔵量が多い国は世界の約36%を占める中国で、次にブラジル、ベトナム、ロシア、インドの順になります。最近では米国も古いレアアース鉱山の再採掘、精錬を始めたようです。
 埋蔵量のトータルはおおよそ1億2千万トンで、現在の世界のレアアース鉱石生産量年24万トンを基準に計算しても約500年分になり、埋蔵量だけを考えると名前のような希少金属ではありません。したがって、ネオジムだけをみれば、埋蔵量については将来も心配は少ないといえます。

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