85.Dy含有量を減らす(3)-熱間加工磁石-

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<Dyフリー熱間加工ネオジム磁石>
超急冷法によって作られたネオジム・鉄・ボロン(NdFeB)粉末を「ホットプレス」したのち、高度な「熱間加工」により成形して異方性磁石にする製法が「熱間(押出し)加工製法」であり、大同特殊鋼(ダイドー電子)がこの製法を開発した。
微細結晶組織を保ったままホットプレス、「熱間押出し成形」を行い、理論密度に近い高密度と高いラジアル配向度を実現して、焼結磁石に近い性能を得られる。従来、困難と考えられてラジアル異方性リング磁石など、焼結磁石では難しいニーズに対応できるようになった。
さらに、熱間加工磁石の大きな特徴として焼結磁石に比べて“結晶粒がより微細化し易い(約1/10)”。したがって、相対的に高い保磁力(Hcj)が得られ易く、Dyの低減が可能。

その後、ダイドー電子では結晶組織の制御技術などで「Dyフリー磁石」の開発に成功。2016年7月、ハイブリッド自動車駆動モーター用磁石の生産を開始した。

熱間加工ネオジム磁石 (株)ダイドー電子ホームページ

さて、Dy低減技術についての前章までの話は、現在世界的な主な製法・焼結法で製造されていますネオジム焼結磁石について述べてきたものです。
しかしながら、最近になりラジアル異方性リング磁石の有利な製法で知られている熱間加工磁石が、Dy低減やDyフリーネオジム磁石としてもクローズアップされてきました。

この磁石は、ネオジムボンド磁石の材料と同様、超急冷法によって作られたネオジム・鉄・ボロン(NdFeB)粉末をホットプレスしたのち、特殊な熱間加工により成形して異方性磁石にする製法で製造されます。大同特殊鋼(ダイドー電子)がこの製法を開発し、20年以上前から量産されていますが、微細結晶組織を保ったままホットプレス熱間押出し成形を行い、理論密度に近い高密度と高いラジアル配向度を実現して、焼結磁石に近い性能を得られというネオジム磁石です。この磁石によって、薄物ラジアル異方性リング磁石など、焼結磁石では製造が難しい製品に対応できるようになりました。

一方、この熱間加工磁石は別の特徴も有しています。それは、この磁石は焼結磁石に比べて約1/10の大きさの微細結晶で構成されていということです。そのために、焼結磁石と較べて相対的に高い保磁力(Hcj)が得られ易いといわれてきました。つまり、Dyの低減が可能であるということです。
実際に、熱間加工磁石は焼結磁石と比べても、同じ保磁力Hcjであれば、Dyの含有量は少なくて済むようになってきました。

そして、2016年、ダイドー電子では低酸素化技術、結晶組織の制御技術などの技術を結集して、焼結磁石より残留磁束密度が劣るなどの不利な点も克服して、ついにDyフリー磁石の開発に成功しました。そして同年7月、ホンダ向けのハイブリッド自動車駆動モーター用磁石の生産を開始したことを発表しています。

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