<磁石プロの視点>
過去何回かにわたり、南鳥島沖のレアメタル、レアアースの採掘計画についての情報をお伝えしてきましたが、2月1日、ついに「レアアース泥」の揚泥に成功しました。すでに、南鳥島沖ではジスプロシウムやネオジム、ガドリニウムなどの6種類以上のレアアースを高濃度で含む泥が見つかっていて、その埋蔵量は日本の年間消費量の約800年分(約1,600万トン)に相当するといわれています。
来年、2027年度中には350トンの泥の回収に挑戦する計画で、今回の揚泥の化学的、技術的なデータをもとに、商業化への道を切り開いて行くことになります。
日本が探査船「ちきゅう」を使って採用した画期的な「掘削・揚泥」技術は、採鉱装置の中で海水で解泥・スラリー化し、内管で泥を汲み上げ、外管から加圧した海水を供給、循環させる「閉鎖系二重管揚泥方式」です。一本10m長のパイプを600本、6000mまで接続して、600気圧の超高圧環境下で揚泥します。この方式の概略を、次図の内閣府総合海洋政策推進事務局による「海洋開発重点戦略に係る重要ミッション(案)」の中の重要ミッション「南鳥島沖でのレアアース泥の採取を実現する」の中間報告抜粋から示します。

しかしながら、この図でも想定できるように、産業化、商業化までの道は簡単ではなく、
(1)深海の超高圧下での採掘器、連結パイプの位置制御、(2)600本のパイプの安定密閉化、(3)超高圧ポンプの安定駆動・堅牢化、(4)陸上の鉱石とは異なるレアアース泥の分離・精製技術、(5)総合的な採算性(経済的合理性)などなど、解決しなければならない課題は山積していて、産業化、商業化までの道のりは大変険しいといえます。
なお、南鳥島プロジェクトは、内閣府、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、東京大学の「レアアース泥開発推進コンソーシアム」を中心に、日本の主要企業(三井海洋開発、東亜建設工業、東洋エンジニアリング、古河機械金属、島津製作所、商船三井、日本郵船、川崎汽船、JX金属、三菱マテリアル)が結集したオールジャパン体制で推進されています。
前回の報告と同様、プロジェクトに携わっているこれらの機関、団体、企業、研究者、技術者の方々にエールを送ると共に、一日も早いレアアースの国産化を期待しましょう。
<ニュースリリース>科学技術振興機構 2026年2月6日
南鳥島EEZでレアアース試掘に成功 深部探査船「ちきゅう」活用
-要旨-
南鳥島(東京都)沖の排他的経済水域(EEZ)でレアアース(希土類)の試掘に成功したと、内閣府と海洋研究開発機構(JAMSTEC)が発表した。地球深部探査船「ちきゅう」からパイプを接続しながら降ろし、水深約6000メートルの深海底からレアアースを含む泥を引き揚げた。レアアースは自動車や電子機器などの性能向上に欠かせず、「産業のビタミン」とされる鉱物資源。世界生産の大半を中国が握る中、国産化に向けた一歩として注目される。

取り出す作業(内閣府SIP、JAMSTEC提供)
試掘は内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環。ちきゅうは先月12日に事実上の母港である清水港(静岡県)を出港。17日、都心から南東に約1900キロ離れた南鳥島沖の現場海域に到着した。開発した機器や無人潜水機などを一通り使った採鉱システムの試験が主目的だが、実際にレアアース泥の引き揚げも試みた。30日に採掘を開始し、今月1日、レアアース泥を船上に引き揚げたことを確認した。15日に帰港する。
今後は引き揚げた泥からレアアースの精製を試みるほか、調査手法や技術課題の検証などを進める。来年2月にも南鳥島沖で、一日当たり350トンを目標にレアアース泥の本格採掘を実証する。その後は資源量の高精度3次元地図化や、産業化に向けた検討などを進める。

眠る海底に到達した採鉱機(内閣府SIP、JAMSTEC提供)
小野田紀美科学技術担当相は3日の閣議後会見で、「2018年の開始以来、着実に実施してきたプロジェクトの節目として喜ぶと共に、引き続き精力的に研究開発と技術実証を進めていく。一連のプロセスを実証し、総合的に南鳥島沖レアアース生産の経済性評価を行う。その結果を踏まえ、実用化の可能性を検討していく。今後、国としてどうするのかしっかり検討したい」と述べた。
松本洋平文部科学相も同日、「引き揚げた試料のレアアース含有量など、詳細は今後確認すると聞いているが、まずは成功をうれしく思っている」と話した。続けて「水圧や海流の影響が大きい中、パイプを傷つけずに上げ続けるには大変な技術が必要だ。また、町工場の皆さんが知恵と技術を結集した(小型無人深海探査機)『江戸っ子1号』も一緒にやって、こういうことができた。世界最先端の、わが国の大きな一歩になるかもしれない。大きなチャレンジに大変、貢献をしていただいている」と付け加えた。
レアアースは希少、または抽出の難しい金属「レアメタル」の一部で、ネオジムやジスプロシウムなどのランタノイド15元素にスカンジウム、イットリウムを加えた計17元素。元素ごとに磁気や超電導、光学、触媒などの独特な性質を発揮するため、電気自動車のモーターや風力発電機、ハードディスク、スマートフォン、発光ダイオードなど、幅広い用途で使われている。レアアース鉱床の多い中国が世界生産の7割、埋蔵の5割を占め、輸出規制の強化を外交カードに利用しているとされる。
東京大学大学院工学系研究科の加藤泰浩教授らが2011年、海底にレアアース泥が分布することを発見。13年に南鳥島沖のEEZに超高濃度で高品質のレアアース泥の存在を突き止めたのを機に、資源開発に向けた産学官の取り組みが続いてきた。経済安全保障推進法に基づく経済産業省の「重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針」はレアアースについて、30年時点で国内の永久磁石の需要確保を目指すとし、目標を定めている。




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