希土類(レアアース)の需給動向-2

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<磁石プロの視点>
 ネオジム(Nd)やプラセオジム(Pr)の軽希土類はネオジム磁石の主要金属成分ですが、一方、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)などの中重希土類は、もともと耐熱性の高いサマリウムコバルト磁石やネオジム磁石の耐熱性を上げるためには欠かせない金属成分となっています。これらの中重希土類は、特に、BEV、HEVのモーター関連や軍需用途に不可欠な資源であるため、極めて重要な戦略物質となっています。
 ところが、現在中重希土類が豊富に含有されている鉱床は中国の南部に偏在していて、中国以外の国での中重希土類の生産量増加は、簡単には行かない状況です。
 現在、中国以外の国、地域で新しい鉱床の開発や現在の鉱山での中重希土類の増産プロジェクトが進行中であり、また、中重希土類を使わない高耐熱磁石の開発も急がれていますが、大きな成果を得るにはまだ時間がかかりそうです。

-参考・引用資料-
■レアアースの需給動向 2024.06.27
 JOGMEC(独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構)
 金属企画部調査課 千葉樹


<中重希土類について>
 重希土類とは、希土類元素(レアアース)のうち、原子量が重い元素の総称です。具体的には、スカンジウム、イットリウム、およびランタノイドのうち、原子番号64のガドリニウム(Gd)より原子量が大きい元素(GdからLuまで)を指します。これらは、特にBEVやHEVのモーターなどに使われるネオジム磁石の耐熱性を高めるために不可欠な素材ですが、世界的に生産量が少なく、中国への依存度が高いのが課題となっています。なお、前章で紹介をしました軽希土類のうち原子番号62のサマリウム(Sm)と原子番号63のユーロピウム(Eu)を中希土類と呼ぶこともあり、総称して中重希土類ともいいます。


<中重希土類の鉱床と特徴>
 次図は世界の代表的な希土類の鉱床について、その含有されている各種希土類含有率を表したものです。米国の代表的な希土類鉱山は「マウンテンパス(Mt.Pass)」であり、豪州は「マウントウェルド(Mt.Weld)」になります。また、中国は北部、内モンゴル自治区の「白雲鄂博(Bayon Obo)」、南部の江西省「信豊(Xinfeng)」が代表的な鉱山です。

米国・豪州の代表的な鉱山と希土類含有率
中国の代表的な鉱山と希土類含有率

 図のように、米国の鉱山はバストネサイト鉱床、豪州の鉱山はモナザイト鉱床であり、特に米国の鉱床は軽希土類の含有率が大きく、中重希土類の含有率が極めて小さいことが特徴です。また、中国の鉱床は北部は共生鉱が多く、米国、豪州の鉱山と同じく軽希土類が中心です。しかし、南部は中重希土類を多く含有するイオン吸着鉱の鉱床が多いことが知られています。
 2025年現在の希土類生産量(酸化物換算)は約30万トンといわれていますが、約80%が中国生産であり、なかでも中重希土類のほとんどは中国のイオン吸着鉱に頼っています。ただし、豪州の鉱床は米国の鉱床より中重希土類の含有率が比較的高いので今後の生産量増加が期待されます。

また、中国以外の国・地域での新規鉱山開発や新規分離精製技術・設備などの開発も動き出していますので、次回ご報告する予定です。


 

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