<磁石プロの視点>
微粉砕された磁石材料粉末は成形され、その後焼結炉で密度の高い焼結体にされます。この焼結過程での結晶粒の制御がSm2Fe17N3磁石やNd2Fe14B磁石(ネオジム磁石)にとって非常に重要になります。
特に最近は粒界の制御が注目されていて、この制御は、”結晶粒の微細化”、”粒界歪の低減”、”液相焼結の推進”、”異種材料による主相の被覆”、”異種材料の主相への拡散”、等様々な目的に利用されています。本研究では、乾式薄膜技術を用いて粉末の表面に異種材料のナノ被膜をコーティングする技術を開発中であり、Sm2Fe17N3焼結磁石の実現やネオジム焼結磁石の性能向上に寄与するものと思われます。
【産総研の永久磁石研究開発-6】*産総研ホームページより
<粉末コーティング技術の開発>
永久磁石の性能が結晶粒界の性質に大きく依存することはよく知られており、「粒界制御」は磁石研究における重要なキーワードです。一方、粉末冶金プロセスによって作られる材料では、粉末の「表面」が焼結後の粒界を形成することになるので、粒界制御の問題を粉末表面修飾の問題に置き換えることができると言えます。
この観点から、当チームでは、粉末の表面に異種材料のナノ被膜をコーティングする技術を開発しています。真空容器内で粉末を連続攪拌しながら、乾式薄膜技術を用いて被覆材料をコーティングします。この方式は汎用性が高く様々な材料に適用できるので、被覆相の組成や膜厚、複数材料の組み合わせなどを変えながら、粒界特性のチューニングを行うことができます。さらに、この技術を低酸素粉末冶金プロセスに組み込み、金属粉末表面に酸化物層を介すことなく異種材料をコーティングすることにも成功しています。

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