フェライト磁石を使ったEVモーター

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 プロテリアル(日立金属から社名変更)は2022年12月9日、同社の高性能フェライト磁石を適用したモーター「フェライト磁石モーター」を最適化設計することで、ネオジム磁石を使用した電動車用駆動モーターと同等レベルの出力が得られることを、シミュレーションで確かめたことを発表しました。
 その後、同社は同社は電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)など電動車の駆動用を想定したフェライト磁石を使ったモーターを試作し、2023年8月、最高出力として約100kWを得られることを確認しました。同磁石は多くの駆動用モーターで使われるネオジム(Nd)磁石と異なり、希土類(レアアース)を使いません。駆動用モーターで高まる「レアアースフリー」の需要に対し、選択肢を広げる可能性が出てきました。自動車メーカーやモーターメーカーに提案を進め、2030年代前半に駆動用モーターで実用化することを目指します。

フェライト磁石を搭載したEV用モーターのローター試作品

 このフェライト磁石を搭載したモーターは、永久磁石型同期リアクタンスモーター(IPMSynRMモーター)に分類されます。性能試験では、最高出力102kW、最高回転数を1万5000rpmまで上げました。具体的には、磁石の寸法や配置、磁石を挿入するスロットの形状などをシミュレーションして磁気回路の適正化を図り、モーター性能を高めました。
 モーターの出力はトルクと回転数の積で決まります。フェライト磁石はNd磁石に比べ磁力が弱く、トルクはNd磁石を搭載したモーターより低いので、高出力を確保するためには、回転数を上げる必要がありました。一般的にモーターを高回転化すると渦電流による鉄損が増えますが、フェライト磁石はNd磁石より電気抵抗が高いため同損失を抑えられます。

シミュレーション結果と試作モーターの実測値

 フェライト磁石は主成分が酸化鉄(Fe2O3)であり、レアアースを使わないローコスト磁石として知られています。したがって、このモーターが実用化できれば、原料調達リスクの少ない、ローコスト電動車用モーターの普及が期待できます。

<筆者考察>
 ただし、本格的な実用化には種々の難題をクリアしなければならず、フェライト磁石の低温減磁の問題や低トルクにより常に高回転域で使用しなければならない問題などがあります。したがって、もう少し時間が必要かもしれません。

*フェライト磁石の低温減磁
 ネオジム磁石と異なり、フェライト磁石は温度の低下にしたがって保磁力(Hcj)が0.2%/℃ほど低下します。そのため、室温の磁石の保磁力の値にもよりますが、ある一定以上の低温度になると、低温減磁(低温度における不可逆減磁=不可逆温度変化)が起こります。

                         2024年9月16日 ネオマグ株式会社

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