日米豪のレアアース中国離脱作戦

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<ネオジム磁石の原料>
 前回お話をしましたように、日本は「レアメタルの争奪戦」に後れを取っています。そのために、政府は「GXを見据えた資源外交の指針」を策定し、レアメタル資源の確保のために、友好国を中心に協力関係を結んで、権益を確保する方針を打ち出しています。
 その中で、日本はネオジム磁石の主原料である「レアアース(希土類)」を中国以外の国の権益を拡大しようと懸命になっています。また、米国、豪州は自国のレアアース採掘、分離・抽出を拡大して、やはり中国依存の状況から脱出しようとしています。

<レアアースの需要拡大が継続>
 日本・アメリカ・EUはレアアースなどの安定調達を図るため,中国への依存度を下げる供給体制の構築をめざしてきました。特に、昨今の世界情勢から中国に依存するリスクが大きく懸念されてきています。一方、欧米を中心に、2050年のゼロエミッション(二酸化炭素の排出・吸収が均衡)を実現するため,EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)の普及を進めていますが、その駆動モーターの大半がネオジム磁石を使った「永久磁石型同期モーター」となっています。したがって、EVやPHEVの市場拡大とともに、ネオジム鉄ボロン(Nd-Fe-B)系焼結磁石の需要が中長期で拡大する方向になっています。主要原料の軽希土類のネオジムやジジムのほか、保磁力(磁化反転のしにくさ)を高める中重希土類のテルビウム(Tb)やジスプロシウム(Dy)の消費量も拡大を続けることになります。

テスラ・モデル3のモーター

<米国および豪州のレアアース>
 現在、日本の輸入商社を中心に、米国や豪州の権益拡大を計っています。米国は過去にマウンテンパスで大規模なレアアース採掘を行っていたMPマテリアルズが再び採掘、抽出分離を拡大してきて、この販売権益を住友商事が契約しました。一方、双日は豪州のライナス社のレアアース販売代理店契約を結び、いずれも、将来的に中重希土類に富む精鉱の生産・流通が中国外で増えれば、中国依存度の低下につながるとみられています。
 さらに、双日はJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)と「日豪レアアース」を共同設立して、180億円の追加出資を「ライナスレアアース」社に行い、ライナスが生産する中重希土類のテルビウムやジスプロシウムの最大65%を日本に供給する契約を締結しました。

<米国MPマテリアルズ>
 MPマテリアルズのメイン鉱山であるマウンテンパスは重希土のテルビウムやジスプロシウムの含有量が低いため、重希土には力を入れてこなかったが、これからは軽希土だけではなく重希土の抽出、分離工程も拡大させて販売に力を入れる予定です。
 なお、MPマテリアルズは、電気自動車で年50万台分の磁石を供給する計画を発表しました。昨年から7億ドルを投じ,テキサスに希土類金属・磁石合金・ネオジム磁石工場などのサプライチェーンの構築を開始しました。

 このように、日米豪を中心に、各国ともに中国からのレアアース依存をできるだけ少なくする努力を続けています。

                           2024年9月8日 ネオマグ株式会社

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