<ネオジム磁石の用途とジスプロシウム・Dyの含有量>
次図は標準的なネオジム磁石について、保磁力Hcj、エネルギー積BHmaxの関係と、各磁気特性の磁石がどのような用途に使われているか、またそれらの磁石にどれくらい「ジスプロシウムDy」が含まれているかをあらわしている(但し、「テルビウムTb」を代用する場合もある)。グラフの左側の使用環境がそれほど厳しくない用途ではHcjは低くても熱による不可逆減磁はそれほど問題はなく、大きなBr、BHmaxが利用できる。また、グラフの右側の保磁力Hcjが大きな磁石はBr、BHmaxは低下するが熱による不可逆減磁が少ないため高温度使用の用途に使われる。つまり、ジスプロシウムDyやテルビウムTbはネオジム磁石の耐熱性を高めるために添加される。
この図は2013年前後までのネオジム磁石について、保磁力Hcj、エネルギー積BHmaxの関係と、各磁気特性の磁石がどのような用途に使われているか、またそれらの磁石にどれくらいジスプロシウムDyが含まれているかをあらわしたものです。
前ページまでにお話をしましたように、グラフの左側の使用環境がそれほど厳しくない用途ではHcjは低くても熱による不可逆減磁はそれほど問題はなく、大きなBr、BHmaxが利用できます。また、グラフの右側の保磁力Hcjが大きな磁石はBr、BHmaxは低下しますが熱による不可逆減磁が少ないため高温度使用の用途に使われます。
ご覧のように使用温度がそれほど高くならない音響、パソコン関連は低Hcjでジスプロシウムが2%以下またはゼロで済みます。ところが使用温度が高くなったり、使用時のパーミアンス係数が低くなったりするにつれ、Hcjが大きな磁石、つまりジスプロシウム含有量が多いネオジム磁石が必要になってきます。
ジスプロシウム含有量は図にありますように、例えば、FAモーター関連が4~5%、エアコンのコンプレッサー、ロボット、発電機関連が5~7%、HV、EV用モーターが8~10%となっています。
ところが、最近日本国内のみならず世界的に、産業機器モーター、発電機、HV、EV等の高耐熱用途が増加しているため高保磁力磁石の需要が急増しています。したがって、手をこまねいていますとジスプロシウムを大量に使用せざるを得ない状況になってしまいます。そこで、保磁力を維持しながらいかにジスプロシウム量を減らすか、いいかえればジスプロシウム量を変えずにいかにHcjを増大させるかが磁石メーカーの重要な開発テーマのひとつとなっていました。
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