<各種永久磁石の温度・機械・物理特性>
永久磁石の磁束密度の可逆温度変化はBrの温度係数によって、不可逆温度変化(熱減磁)はHcjの温度係数によって左右される。特に、ネオジム磁石のHcj温度係数に気を付けたい。
また、ネオジム磁石の磁化と垂直方向の熱膨張係数がマイナスであるため、他材との接着加工などは注意を要する。
この表は、各種磁石の温度特性・機械特性・物理特性を比較したものです。
まず温度特性についてです。この中で温度係数とは、磁石温度が1℃上昇した時の磁気特性の変化率を示したもので、「残留磁束密度Brの温度係数」と「保磁力Hcjの温度係数」を示しています。
これらをみると、サマリウムコバルト磁石略してサマコバ磁石とアルニコ磁石の温度係数がBr、Hcjとも優れていることがわかります。フェライト磁石のHcjはプラスの温度係数ですので、低温度ほどHcjが低くなることになり、このことがフェライト磁石の「低温減磁」につながっています。
ネオジム磁石は特にHcjの温度係数が大きく、温度上昇によってHcjが大きく低下することがわかります。温度係数の良し悪しは磁化が消滅する温度、「キュリー温度」が低いか高いかでおおよそ決まってきます。
「密度」については、樹脂を混合したボンド磁石が低い値となっています。
「ビッカース硬度Hv」はボンド磁石、ゴム磁石を除いて、各磁石共に高い数値となっています。ネオジム磁石の硬度は表面のめっきの硬度ではなく素地の磁石の硬度で、かなり硬い磁石といえます。
ネオジム磁石、サマコバ磁石、フェライト磁石は化合物材の焼結品ですから、硬くてもろいといえます。したがって、「圧縮強度」、「引張強度」、「抗折強度」などの機械強度は一般の金属製品と比べて全般にあまり大きくはありません。
また、硬くて変形しにくいので、この3種類の磁石は「ヤング率」も大きな値となっています。
「熱膨張係数」は一般的な金属材料とあまり変わりませんが、ネオジム磁石だけは磁化方向に対して垂直方向は熱膨張係数がマイナスとなっている特徴があります。温度に対する形状変化に敏感な使い方をする場合は気を付ける必要があります。
「電気比抵抗」は金属材料である、ネオジム、サマコバ、アルニコの各磁石は小さな値となっていて、電気を良く通します。ただし、ネオジム磁石は素地の数値であり、ニッケルめっきを施してある場合はさらに小さな数値になります。
フェライト磁石は酸化物のセラミック磁石ですからほとんど電気を通しません。ボンド磁石、ゴム磁石も同様です。
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