54.永久磁石の磁化曲線と各種透磁率

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<磁化曲線と透磁率>
透磁率とは磁束の通り易さをあらわす。初磁化曲線上のBとHの比を
透磁率μ=B/H」といい、原点付近のものを「初透磁率μi」、最大のものを「最大透磁率μm」と呼んでいる。また、真空の「透磁率μ0」との比を「比透磁率μs」という。そのほか、減磁曲線上の「リコイル透磁率μrec」、「リコイル比透磁率μr」などがある。

磁性体の透磁率とは磁束の通り易さをあらわします。軟鉄やパーマロイ、ソフトフェライトのような「ソフト磁性材料」では重要な磁気特性ですが、「ハード磁性材料」の永久磁石ではあまり重要視されないようです。しかし、磁気回路設計では必要になる場合もあるようですので、覚えておいてください。

さて、磁石を飽和まで磁化してゆく最初の立ち上がりの曲線を、JH曲線でも、BH曲線でも「初磁化曲線」と言いますが、「透磁率」についてはBH曲線上で評価することになっています。
初磁化曲線上のBとHの比を透磁率μ=B/Hといい、原点付近のものを
「初透磁率μi」、最大のものを「最大透磁率μm」と呼んでいます。SI単位系での単位は[H/m]で、CGS単位系では無名数です。透磁率が大きい磁性体ほど、小さな磁場で磁化され易いといえます。永久磁石の透磁率は一般的にはμiとμmの間の平均的な値を選んでいるようです。

「真空の透磁率μ0」との比を「比透磁率μs」といい、無名数であらわします。軟(ソフト)磁性材料は比透磁率が高く、一般的な鉄材の比透磁率は5,000、純鉄で20万程度になります。その他では、パーマロイが10万、センダストが100、ソフトフェライトで2,000程度となります。ネオジム磁石やサマコバ磁石の比透磁率はおおよそ1.05でフェライト磁石は1.15程度となります。

次に、BH曲線の第二象限すなわち減磁曲線でも透磁率と呼ばれる磁気特性があります。
後で動作点についてはくわしくお話をしますが、この図の中の、P1の動作点からP2の動作点の間の変化を「リコイル曲線」、または「リコイル線」といいます。
BH曲線上の任意の動作点P1から動作点P2に戻し、再び元のP1まで変化させた時に得られる「マイナーループ」をリコイル曲線と呼びますが、永久磁石のリコイル曲線は通常ループの幅が小さいので直線で近似でき、その線をリコイル線と呼んでいます。そしてリコイル線の勾配を「リコイル透磁率・μリコイル(μrec)」または「可逆透磁率・μリバーシブル(μrev)」と呼んでいます。ネオジム磁石などのリコイル透磁率は初磁化曲線上の透磁率とほぼ同等の値となります。したがって、真空の透磁率μ0との比である「リコイル比透磁率μr」も初磁化曲線上の「比透磁率μs」とほぼ同等になり、永久磁石ではこのリコイル比透磁率を磁気特性評価の一つに上げることが多いようです。
リコイル比透磁率が1に近いほど、JH曲線の角形性が良好であり、より安定した良い磁石といえます。

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