53.永久磁石の磁気特性と磁化曲線

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<磁化曲線とは>
磁化曲線は磁気履歴曲線やヒステリシスループとも呼ばれ、一般的には
J-H曲線」または「B-H曲線」であらわす。J-H曲線とB-H曲線の違いは、J-H曲線は外部磁場に対する永久磁石自身の磁化の大きさの変化をあらわし、B-H曲線は外部磁場も含めた磁気回路の中の磁化の大きさの変化をあらわす。

永久磁石の磁化曲線(磁気履歴曲線)の例

それでは永久磁石の磁化される過程を磁気履歴曲線ともいいます磁化曲線でみてみましょう。

まず、赤い曲線の「J-H曲線(JHループ)」について説明いたします。
この曲線は加えられた外部磁場の大きさを横軸にとり、縦軸は磁石だけの磁化の大きさの変化をあらわしたもので、加えられる外部磁場が大きくなるにしがって、磁化がaからbの順におおきくなり、cで飽和します。これ以上外部磁場を大きくしても、磁石自身の磁化は変化しなくなります。この値を「飽和磁化(Js)」といいます。
次に外部磁場を、磁化を飽和させた大きな磁場から徐々に弱くさせて、ゼロまで変化させますと、cからdとJH曲線は動きます。永久磁石の場合はこの外部磁場ゼロの点で、「残留磁化(Jr)」が残り、このJrが大きいほど永久磁石は強い磁石になります。
さらに、外部磁場をゼロからマイナスの逆方向に大きくして行きますと、dからeに磁化は動きます。しかし、ネオジム磁石やサマコバ磁石、フェライト磁石のような異方性磁石はeのように逆磁場に対してもまだ磁化の大きさはあまり変化しません。
ところがe点以上の大きさの逆磁場を加えて行きますと、急に磁化が減少し出します。そしてfのような磁化がゼロになる点、すなわち磁石でなくなる点の磁場の大きさを「固有の保磁力(Hcj)」と呼び、このHcjが大きい磁石ほど外部磁場の変化や熱による変化に強い磁石になります。このJH曲線は主に永久磁石単体や磁石材料の性能を評価する時に使います。

さて、次に青い曲線の「B-H曲線(B-Hループ)」についてです。
この曲線がJH曲線と異なる点は外部磁場を縦軸の磁石の磁化に加えることです。つまり、磁場がかけられた磁気回路のなかで、トータルの磁化がどのように変化するかを測定・評価する曲線です。
JとBの基本的な関係を左上の式に表していますので曲線の違いがおわかりになると思います。
ここで、空気の透磁率は真空の透磁率に近いため、空気中の関係式もほぼ同様と考えてください。
JH曲線は永久磁石自身の磁化が飽和しますとそれ以上縦軸の磁化の強さは変わりませんが、BH曲線では外部磁場の大きさが縦軸の磁化の大きさに加えられますので、外部磁場が大きくなればなるほど曲線は右肩上がりとなってゆきます。外部磁場をゼロとした時は、J-H曲線と交わります。この点の「残留磁束密度(Br)」はJ-H曲線のJrと一致します。
さらに、マイナスの逆磁場を加えて行きますと、今度は永久磁石自身の磁化にマイナスの磁場が加わりますので、急激に磁化の大きさは低下して行きます。磁化ゼロの点、すなわち「保磁力(Hcb)」はJ-H曲線の固有保磁力Hcjとは異なって小さな値となります。ただし、優秀な永久磁石ほどHcjとHcbはより近い値となります。

最後にもう一度J-H曲線とB-H曲線の違いをおさらいしますと、J-H曲線は外部磁場に対する永久磁石自身の磁化の大きさの変化をあらわし、B-H曲線は外部磁場も含めた磁気回路の中の磁化の大きさの変化をあらわしています。

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