この図は主な磁石の磁気特性分布とその特徴の概要です。
まずは「フェライト磁石」ですが、この磁石は安価であり、世界で最も数多く使われている磁石で、性能的にも、使用環境に対しても安定性に優れています。ただし、マイナス20℃以下のような低温度環境では、低温減磁が大きいので注意を要します。
次に「フェライトゴム磁石」です。
この磁石は磁力は弱いのですが、柔軟性があり、切断、穴あけ等の加工が容易にできる利点があります。製品には帯状・シート状タイプが多いのではないでしょうか。
「アルニコ磁石」は古くからの磁石ですが、温度性能に優れ、各種計器等に根強い需要があります。保磁力Hcjが小さいため、逆磁界が強い磁気回路には向いていません。また、棒状、円筒形で、高さの高い形状がほとんどです。打撃、振動で減磁することがありますので注意が必要です。
「ネオジム焼結磁石」は後の章でも詳しくお話をしますが、実用磁石としては最高性能の磁石で、生産量が着実に増加しています。ほかの磁石に比べて温度係数が大きいので、高温度用途、温度変化が激しい用途にはそれらの用途に適した材質を選択する必要があります。原料資源が中国に偏っているため、その価格が様々な中国の事情に左右されやすいという不安が常につきまといます。
通称サマコバ磁石の「サマリウムコバルト磁石」はネオジム磁石の次に優れた磁気特性を持っていて、さびにくく、温度特性が優れているので、高温使用や各種センサー用途に向いています。ただし、ネオジム磁石より機械強度が劣りますので、カケ、ワレが出やすい欠点があります。
「ネオジムボンド磁石」はすべての方向に同じように磁化される、いわゆる等方性の圧縮成形タイプの磁石です。混合されるバインダーにはNBR、エポキシ系、ナイロン系、ウレタン系など様々な合成ゴムやプラスチック樹脂が使われます。着磁が容易で、薄物・複雑形状に向いていますが、磁気特性は焼結磁石に較べると劣ります。また使用可能温度が比較的低いので、高温使用には向いていません。
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