20. ネオジム磁石の結晶構造と基本磁気特性(1)

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<高性能永久磁石が必要な基本磁気特性>
飽和磁化Is」が高く、室温以上の高い「キュリー温度Tc」を有し、十分大きな「異方性磁場HA」を持つ「Nd2Fe14B化合物」が非常に優秀な永久磁石となりえた。

それではここでネオジム磁石がなぜ強い磁石になったのか、その基本的な磁気の性質・磁性について考えてみましょう。
ある磁性材料が強力な永久磁石になるための基本的な磁性の要件は次の3つになります。
一つは、大きな飽和磁化Jsです。飽和磁化の大きさが大きいほど磁石は強くなります。
二つ目は、磁化が消えてしまう温度、キュリー温度Tcが実用領域の温度より高いことです。
三つ目は、逆磁界に対して簡単に磁化が減少してしまわないこと、つまり逆磁界に対する抵抗力ともいえる保磁力Hcjが大きいことです。
左の図はネオジム磁石を構成するネオジム鉄ホウ素の金属間化合物、Nd2Fe14B正方晶化合物の結晶構造です。
この結晶は一軸異方性といって、この図のように結晶の一定方向のみに磁化されやすい性質を持っています。逆に磁化容易軸と垂直な方向は、磁化困難軸といって、この方向へ磁化させるためには非常に大きな外部磁界が必要となります。この磁界を異方性磁界Hと呼んでいます。

右上の図は各種希土類金属の鉄とコバルトとの化合物の飽和磁化を比較したもので、基本的にはこの値が大きいほど強い磁石になります。ごらんのように、R2Fe14Bの結晶構造が最も飽和磁化Jsが大きく、その中でもRつまり何種類もの希土類の中でネオジム・Ndが最も優秀なことがわかります。

しかしながら、右下の図は、磁化が消滅するキュリー温度はコバルトとの化合物の方が高く、鉄との化合物は比較的低いことを示しています。Nd2Fe14B化合物はキュリー温度が330~350℃付近にあり、何とか実用には間に合う温度だということがわかると思いますが、このキュリー温度が比較的低いことが後でお話をしますネオジム磁石の温度特性の各種課題を引き起こしている原因となっています。

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