17.永久磁石を発展させた磁区の解明 

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<永久磁石と磁区>
20世紀初頭は原子物理学の急速な進歩と共に、磁性科学の飛躍的な発展があった。一方、原子レベルの量子力学的な理論解明だけでは現実的な実用材料の進歩がない。そこで大きな貢献を果たしたのが磁区という目に見える「ミニ磁石の構造の解明」であった。

永久磁石の磁化過程(磁気履歴曲線と磁壁移動)
磁壁移動による磁区の変化

20世紀初頭は原子物理学の急速な進歩と共に、磁性科学の飛躍的な発展がありました。一方、原子レベルの量子力学的な理論解明だけでは現実的な実用材料の進歩がありません。そこで大きな貢献を果たしたのが磁区という目に見える「ミニ磁石」の構造の解明でした。

1907年ワイスの分子磁界の仮説で「磁区」の存在が予言されていま したが、1919年ドイツのバルクハウゼンが実験により、磁区の存在を音で初めて確認しました。この現象を現在も「バルクハウゼン効果」呼んでいます。この音は磁区内の磁化が反転する際の「磁壁移動」の現象を検知した音だったのです。その後、磁区についての研究は急速に進展して行きました。

1930年代になって、マグネタイト微粒子のコロイド液と顕微鏡による磁区観察の技術、「ビッター法」が開発され、目に見える形で磁性体の磁化過程が評価できるようになりました。その結果、磁区は磁性材料の中で立体的な組合せをして存在し、1つの磁区の内部は同じ向きの自発磁化、言い換えれば磁気モーメントが並んでいることがわかりました。なお、磁区と磁区の境界は「磁壁」といわれていますが、単に自発磁化の向きが異なっている磁区の境界に過ぎません。

このように、磁区の原理が判明し、その観察が可能となったことで、近代の製鉄技術、冶金技術の進歩も後押しとなり、高性能な磁石の開発・実用化が加速することになりました。

右下の図は鉄やコバルト、ニッケルなどの強磁性体の磁化の様子を「磁区の動き(磁壁の移動)」と共に表しています。強磁性体は通常自身で全体を取り囲むようなリング状の磁区構造を作ってしまい、そのままでは外部に磁極を露出できないので、磁束を発生できません。しかし、外部磁場が加わると磁壁が移動して磁区の方向がそろい、初めて磁極ができて磁石になります。外部磁界を取り去るとまたリング状の磁区構造になり、外部に自発磁化が出てこなくなります。

左上の図は永久磁石の磁化過程を、「磁気履歴曲線(ヒステリシスループ)」と磁区の動きで示したものです。永久磁石は着磁により磁化されて磁区がそろった後、外部磁界をゼロにしても磁区の多くは磁界方向に揃ったままで磁化が残ります。これを「残留磁化」「残留磁束密度」とよんでいます。なお、磁気履歴曲線や磁化曲線の詳細については、別途お話をすることにいたします。

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