<磁性・磁力の根源>
原子の中の「電子のスピン」という自転運動と「電子の軌道運動」である公転の運動が永久磁石の磁力の元となっている。これらの方向と大きさを持っている電子の磁力を「スピン磁気モーメント」や「軌道磁気モーメント」などと呼んでいる。
それでは永久磁石の場合の磁力の大元について考えてみましょう。
その前に原子の中の電子の状態について理解しておく必要があります。
原子の中には原子核の周りを自転しながら公転する電子があり、これらの電子は原子核に近い順に、K殻、L殻、M殻という名称のとびとびのエネルギー準位の軌道の中に、決められた数だけ入ることが許されています。これらは「ボーアの電子殻軌道」および「殻内電子」と呼ばれています。
大事なことは、これらの「電子のスピン」という自転運動と「電子の軌道運動」である公転の運動が磁性体の磁力の元となっているということです。これらの方向と大きさを持っている電子の磁力を「スピン磁気モーメント」や「軌道磁気モーメント」などと呼んでいます。ただし、磁性体の場合はほとんどがスピン磁気モーメントによるもので、軌道磁気モーメントや「核磁気モーメント」の割合はほんのわずかです。
ところがほとんどの元素の殻内電子は2個ペアになっていて、それぞれの自転の回転方向が逆向きになっています。つまりスピンによる磁気モーメントはお互いのペア電子によって打ち消され、外にあらわれません。このような元素はほとんどが非磁性体となっています。
一方、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性体は、18個入るM殻の中に、それぞれ14個、15個、16個入っただけで次の外側のN殻に2個ずつ飛んで入っています。つまり、最外殻の内側のM殻に、鉄原子では4個、コバルト原子では3個、ニッケル原子では2個の電子の不足があることになります。「フントの法則」により18個の半分の9個の同方向スピン電子に対して順に逆方向のスピン電子がペアになってゆくわけですが、鉄では4個、コバルトでは3個、ニッケルでは2個のペア無し電子が存在することになります。これらは「孤立不対電子」とよばれています。この不対電子がペアの相手がいないためにスピン磁気モーメントを発生させることになるわけです。 不対電子は別名「磁性電子」とも呼ばれています。
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